日日是好日

日日是好日

日日是好日

知足

2021.08.26

みちしるべカレンダー令和三年八月の書です。

みちしるべカレンダーは黄檗宗青年僧会発行のものです。

『知足』

みちしるべカレンダー(黄檗宗青年僧会発行)令和三年八月の書です。

【書き下し】足るを知る。

禅宗では、『知足(ちそく)』と呼ぶことが多いです。間にレ点を入れ、上に書いたように「足る(事)を知る」となります。大雲山龍安寺様(京都市右京区)にある世界文化遺産の蹲(つくばい)に彫られていることでも有名な語です。龍安寺様にある蹲には「吾唯知足【吾(われ)、唯(ただ)足ることを知る】」とあります。

人は、常に向上心を持ち、低きより高き、小より大を目指す事が大事なのかもしれません。同時に、分に安んじ、足ることを知ることも大切です。『法句経(ほっくきょう)【お釈迦様が説かれた教えを短い詩節で記したお経】』には、「知足は第一の富なり。」とあります。

『仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)』には、「若し諸(もろもろ)の苦悩を脱せんと欲せば、まさに知足を観ずべし。知足の法はすなわち是れ富楽安隠(ふらくあんのん)の処なり。知足の人は地上に臥(ふ)すといえども、なお安楽なりとす。不知足の者は天堂に処すといえども、また意(こころ)にかなわず。不知足の者は富めりといえども、しかも貧し。知足の人は貧しといえども、しかも富めり。不知足の者は常に五欲のために牽(ひ)かれて、知足の者のために憐愍(れんびん)せらる。これを知足と名づく。」とあります。諸々の苦悩から脱したいと思うなら、知足の本質に気付きなさい。知足の真理が富楽安隠(ふらくあんのん)の処です。足ることを知る者は地べたで寝る事があっても、幸福を感じることができる。足ることを知らない者は天上にあるような殿堂に住むことがあっても、満足出来ない。足ることを知らない者は裕福になっても、貧しいまま。足ることを知る人は貧しくても、幸せを知っている。足ることを知らない者は五欲(眼・耳・鼻・舌・身の五つの感覚からくる欲、又は財欲・性欲・飲食欲・名誉欲・睡眠欲の為に牽かれ、足ることを知る者は不憫に感じる。これを知足という。

人は欲を持っています。欲を持つことは良くないことと思われがちですが、欲を持つことによって、生き・成長・変化していきます。欲は人を動かす力になりますが、同時に、その欲が思うようにならなかった時に苦しみとなります。欲を捨てることは出来ません。捨てることをしてもいけません。ただ、欲が欲を呼び続け、常に欲求不満な状態になるのは良くありません。自身が手に入れたものに対して、「まだ、あれが足りない」ではなく、「これは手に入れられた」という考え方が『知足』であるのではないでしょうか。自身が手に入れたものや現状に足ることを知ったうえで、向上心を持って更に裕福になっていくのは素敵な事です。逆を言えば、自身が手に入れたものや現状に足ることを知らない人は、どれだけ裕福になってもこころは貧しく不満を抱えたままです。

学校や会社・家庭などで不満を抱えることがあると思います。そんな時は『あれが足りない』『これが嫌い』ではなく、「あれは足りてる」「これは好き」というポジティブな考え方に変える。これが『知足』の一つの考え方です。物事を見る角度を少し変えるだけで実践できるはずです。そうすることで、自身に余裕も生まれ、諸々のことが良い方向に進んでいくのではないでしょうか。何かこころに抱えている方、一度実践頂ければ幸いです。

 

水子供養永代供養墓の京都のお寺
〒611-0011 京都府宇治市五ヶ庄三番割34-3
宝善院(ほうぜんいん)
副住職 秦 崇志(はた そうし)
電話 0774-32-4683